菅丞相

『北野天神縁起』等で有名な菅原道真の物語。延喜の帝の御代のこと、出自は高くないが容色、才覚、芸能にともに優れた菅原の大臣という公卿がいた。大臣は時平の大臣の嫉妬により内裏放火の濡れ衣を着せられ、太宰府に流される。恨みの余り現人神となろうと祈誓し、天満天神となった大臣は、雷電となって都へと向かう。すさまじい雷電に都中の人が恐れおののく中、時平の大臣は稲妻にうたれ、頭も骨もみじんに砕け散るという凄惨な最期を迎える。本書は大臣の師、法性房が祈祷を始めた場面以下が失われている。本書と本文的に近い彰孝館蔵『天神記』(室町物語集 1 に翻刻) によれば、この後祈祷により大臣の心が和らぎ、帝を守護する神となることが語られ、北野社の造営、御詠歌が続いていたと思われる。本書は奈良絵本であるが、挿絵中には人名などが書き込まれており、画中詞も多い。ただし挿絵には一部本文と合わない位置に挿入されているものもある。(出典: 『京都大学附属図書館創立百周年記念公開展示会図録』より)